コラム

※ ここで述べている内容は、あくまでも個人的な見解です。筆者は専門家ではないので、的はずれな部分もあるかと思いますが、広い心で受け止めて下さるようお願いします。

ball008.gif (900 バイト)   中国のコピー二輪車問題 : 歴史は繰り返す (2002/3/17)

 現在、中国におけるコピー二輪車が大きな問題になろうとしています。日本製二輪車をコピーした製品が中国国内で大量に生産・販売され、東南アジアに輸出までされているというのです。意外かもしれませんが、中国は年間1,000万台以上の二輪車を生産し、生産台数で世界一を誇っています。ちなみに、二位はインドで、三位が日本です。その中国製二輪車のかなりの割合(asahi.comによるとおよそ8割)が日本の二輪車のコピーということです。(各メーカーのWebサイトはこちらから。)

 私は数年前、知り合いの留学生に頼んで、中国の、ある二輪車メーカーの会社案内を入手しました。そこに紹介されていた製品の多くはコピー二輪車と言ってよいものでした。コピー二輪車は日本では既にカタログ落ちとなった(=生産・販売が終了した)製品のコピーが殆どでしたが、最近では現行モデルもコピーされているようです。

 ここでコピー二輪車に関してちょっと整理してみたいと思います。

まず、コピー二輪車の定義ですが、以下のように大きく三種類に分けられるのではないかと思います。

@ 丸ごとコピー(外観、エンジン等、全て同じ。)
    丸ごとコピーの場合でもステッカーやカラーリングは異なっていることが多いようです。

A 外観のみコピー(外観は同じ。エンジン等は別もの)
    ぱっと見には殆ど同じに見えますが、よ〜く見るとエンジンには他機種のものが流用されていたりします

B 一部がコピー。
    外観やエンジン等が、なんとなく似ているけど、違う部分も少なからずあったりします

まず、@は文句なしにコピー二輪車で、法律的(中国の国内法がどのようになっているかはわかりませんが)にも問題と思われます。Aもデザインが同じなのですから、違法になる可能性は高いでしょう。問題はBです。似ている部分の部品(コピー部品?)の出自によって違法か合法かが決まるのではないかと思います。そこで、正規の部品を基準として、コピーと思われる部品を分類すると、以下の6段階程になると思われます。

レベル6:正規部品メーカーからの部品の流出。(本物。)
レベル5:正規部品メーカーからの金型流出。(外観は全く同じ。)
レベル4:正規部品から金型を起こす。(非常によく似ている。)
レベル3:正規部品から独自の金型を起こす。(とてもよく似ている。)
レベル2:正規部品のデザインに似せる。(よく似ている。)
レベル1:正規部品のデザインを参考にする。(何となく似ている。)

レベル4〜6の部品を用いていれば明らかに違法でしょう。レベル3は限りなく黒に近いグレーと言えます。問題はレベル2です。これは個々のケースで判断が分かれるでしょう。レベル1は白に近いグレーと思われます。

 かつて日本でもコピーやデザインに関する問題が生じていました。1950年代前半の過当競争期には当時の二輪車先進国であったドイツやイギリスの二輪車をコピーして問題となりました。現在の日本のあるメーカーが最初に作った二輪車はドイツメーカーのコピーバイクだったというのは有名な話です。一応、名誉のために付け加えますが、そのメーカーは本家ドイツメーカーよりも高性能になるように一部の設計を変えていたそうです。また、誰もが知っている日本のあるメーカーの50ccの商用二輪車によく似た二輪車を他の日本の二メーカーが製品化し、訴訟沙汰になりかけたこともあったようです。その結果は…現在でも日本のメーカーから販売されている50cc商用二輪車のデザインは非常によく似通っており、二輪車に興味のない人には区別がつきにくいものとなっています。

 以上のように、日本のメーカーもその歴史を遡ると、必ずしも声高に「中国のコピー二輪車の全面禁止を!」とは叫べない事情があります。だからといって、中国のコピー二輪車をそのまま放置するわけにもいきません。個人的には、日本のメーカーはこれまで、よく我慢したと思います。コピー二輪車が中国国内のみで販売されていたのであれば、多少の模倣には目をつむっていたのでしょう。しかし、コピー二輪車が輸出されるようになると、被害は甚大です。東南アジアへの中国製コピー二輪車の輸出が始まったことで、とうとう日本メーカーの堪忍袋の緒が切れたのではないかという気がします。

 では、日本の二輪車メーカーは何を怖れているのでしょうか?表面上は、知的財産権や経済的損失を理由としているようにも見えますが、本音は、日本が歩んできた道を中国が辿ることにより、今は絶対的な技術的優位性を持っている日本の二輪車産業が追いつき、追い越されるのではないかという不安があるのだと思います。現在の中国の二輪車産業をとりまく環境は、日本の1950年代前半と同じ状況にあります。このままの勢いでいけば、10年後には品質面でも日本メーカーに追いつくことは容易に想像がつきます。最初に述べた中国メーカーの会社案内を見る限りでは、明らかに品質が劣っているのが分かります。しかし、数年後、中国国内の激しい競争に勝ち残った企業は当然品質を向上させていることでしょう。その時、中国の二輪車メーカーが日本のメーカーの大きな脅威となっていることは間違いありません。個人的には日本と中国の二輪車メーカーが競争的共存関係になることが望ましいと考えています。

 様々な意味に於いて、今後、日本の二輪車メーカーがこの問題にどのように対応するかが注目されます。 

− 了 −

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